「仕事ができない部下を放置したい」
「できない部下は、放置したほうが」
「どうすればいい?」
と思ってるあなたは、日々の業務で大きな悩みを抱えていることでしょう。
何度指導しても改善しない部下の特徴を目の当たりにし、仕事できない人のフォローに疲れる毎日。
その結果、仕事できない人に優しくできない自分に気づき、ストレスが溜まる一方ではないでしょうか。
「もうやめてほしい」とさえ思うかもしれません。
ですが、それは上司としての責任を放棄することです。
仕事ができない部下をどうするかは、30代、40代の管理職にとって非常に大きな課題です。
しかし、安易な見切りの期間を設ける前に、試すべき正しい育て方があります。
この記事では、部下を放置することの危険性と、上司として今すぐ実践すべき具体的な指導法、そして上司自身の心の守り方までを詳しく解説します。
- 部下を放置することがNGである明確な理由
- 仕事ができない部下のタイプ別原因と対処法
- 指導とパワハラの境界線
- 上司が学ぶべき正しい部下の育て方
仕事ができない部下を放置するリスク
- 仕事ができない部下のよくある特徴
- 放置がチーム全体に与える悪影響
- 指導が通じない部下へのストレス
- 仕事できない人のフォローが疲れる現実
- 仕事できない人に優しくできない心理
- 「やめてほしい」は上司の責任放棄
仕事ができない部下のよくある特徴
まず、仕事ができないとされる部下に見られがちな行動特性を整理します。
もちろん、個人差はありますが、多くの管理職が悩むポイントには共通点があります。
例えば、以下のような特徴が挙げられます。
- 指示されたことしかやらない(指示待ち)
- 同じミスを何度も繰り返す
- 報告・連絡・相談(ホウレンソウ)ができない
- 仕事が雑で、期限を守れない
- 言い訳が多く、他責思考である
- 新しいことへのチャレンジ精神がない
こうした部下を指導する際、上司は「なぜできないのか」と能力面だけを見てしまいがちです。
しかし、本人が「自分はできている」と思い込んでいるケースや、逆に「どうせ自分はダメだ」と極度に落ち込んでいる場合もあります。
つまり、本人の認識と実態が乖離していることも少なくありません。
この認識のズレを把握しないまま指導しても、部下には響かないのです。
放置がチーム全体に与える悪影響
仕事ができない部下を放置することは、チーム全体に深刻な悪影響を及ぼします。
これは、管理職が想像する以上に大きな問題へと発展しかねません。
主な悪影響は以下の通りです。
1. 他メンバーのモチベーション低下 「なぜあの人だけ許されるのか」「同じ給料なのに不公平だ」という不満が、真面目に働く他のメンバーの意欲を著しく低下させます。
2. 業務負荷の偏り 放置された部下の仕事は、結局のところ他の誰かがフォローすることになります。これにより、特定の優秀なメンバーに業務が集中し、疲弊を招きます。
3. チーム全体の生産性ダウン ミスの修正やフォロー業務に時間が割かれ、チーム全体として本来進めるべき業務が滞ります。結果として、部署全体の成果が下がることにつながります。
このように、たった一人を放置することが、チーム全体の雰囲気を悪化させます。
最終的には組織崩壊や優秀な人材の離職という最悪の事態を引き起こしかねません。
指導が通じない部下へのストレス
繰り返し指導しても部下が変わらない場合、上司が感じるストレスは計り知れません。
「やる気はあるようだが、成果が出ない」
「そもそも、やる気が見えない」
など、タイプは様々です。
いくら丁寧に教えても同じミスを繰り返されたり、言い訳ばかり聞かされたりすると、上司側には「もう何を言っても無駄だ」という徒労感や無力感が募ります。
この状態が続くと、上司自身のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼしかねません。
部下への指導がストレスになるのは、上司としての責任感が強い証拠でもあります。
だからこそ、一人で抱え込まず、ストレスの正体と向き合うことが重要です。
仕事できない人のフォローが疲れる現実
「仕事できない人のフォローに疲れる」という悩みは、上司本人だけでなく、現場の同僚や先輩社員からもよく聞かれる声です。
部下のミスが発覚するたびに、上司や他のメンバーが顧客に謝罪したり、データを修正したり、納期に間に合わせるために残業したりする。
こうした状況は、明らかに異常です。
フォローする側は、自分の業務に加えて追加のタスクをこなさなければならず、精神的にも肉体的にも疲弊していきます。
この疲弊が蓄積すると、チーム内の人間関係までギクシャクし始めます。
「なぜ自分が尻拭いを…」という不満は、当然の感情と言えるでしょう。
仕事できない人に優しくできない心理
最初は丁寧な指導を心がけていたにもかかわらず、次第に「仕事できない人に優しくできない」状態に陥る上司も少なくありません。
これは、上司の人間性に問題があるのではなく、心理的なメカニズムが働いている場合があります。
例えば、部下に対して「これだけ教えたのだから、できるはずだ」という期待は誰にでもあります。
それが裏切られたときには、怒りや失望といったネガティブな感情が湧きやすくなります。
また、チーム全体の業績に対する焦りや、他のメンバーへの申し訳なさから、できない部下に対して無意識に厳しい態度をとってしまうこともあります。
優しくできない自分を責める必要はありません。
なぜそのような心理状態になるのかを客観的に理解することが大事です。
それが、まずはじめにやるべきことで、次のステップに進むために不可欠です。
「やめてほしい」は上司の責任放棄
最終的に「もう、やめてほしい」と部下の退職を願う気持ちが芽生えることもあるかもしれません。
しかし、部下を指導し、育成し、チームとして成果を上げることは、管理職に与えられた最も重要な責務の一つです。
部下が期待通りのパフォーマンスを発揮できないからといって、指導や育成を諦め「放置」することは、上司としての責任放棄に他なりません。
もちろん、どうしても改善が見られないケースもありますが、その場合でも「放置」ではなく、「然るべきプロセスを踏む」ことが求められます。
安易に「やめてほしい」と考える前に、上司としてやるべきことを全てやり切ったか、自問する必要があります。
仕事ができない部下を放置しない育て方
- 仕事ができない部下をどうする?
- 部下ができない原因のタイプ別分析
- 自分の成功体験を押し付けていないか
- 上司が学ぶべき部下の育て方
- 業務の細分化と小さな成功体験
- 指導とパワハラの明確な境界線
- 見切り期間の前に試すべきこと
- 限界なら上司への報告も重要
- 部下指導で疲れた上司のストレスケア
- まとめ:仕事ができない部下の放置はNG
仕事ができない部下をどうする?
では、仕事ができない部下に対して、上司は具体的にどうすればよいのでしょうか。
結論から言えば、「放置」するのではなく、「原因を分析し、指導方法を変える」ことが求められます。
多くの上司は、営業成績が優秀だったから、あるいはプレイヤーとして成果を出したから管理職になっています。
しかし、「自分がプレーすること」と「他人にプレーさせて成果を出させること」は、全く異なるスキルが必要です。
「部下を教えるのがうまかった」から、上司になったわけではない、という現実をまず受け止めましょう。
部下ができないのは部下の問題ですが、部下を指導できないのは、あなた(上司)の問題です。
部下のせいにしている限り、問題は永遠に解決しません。
ここからは、上司が学ぶべき育成の技術について解説します。
部下ができない原因のタイプ別分析
「仕事ができない」と一言で言っても、その原因は様々です。
まずは部下がどのタイプに当てはまるのかを冷静に分析する必要があります。
原因によって、効果的なアプローチは全く異なります。
仕事ができない部下のタイプは3つです。
- 能力・技能不足タイプ
- 怠慢・意欲不足タイプ
- 一時的不調タイプ
能力・技能不足タイプ(真面目だが結果が出ない)
特徴としては、本人は非常に真面目で、遅刻もなく、やる気も見られるけいこうにあります。
しかし、なぜか同じミスを繰り返してしまったり、仕事の成果が期待するレベルになかなか届かなかったりします。
原因は、根本的な業務スキルや知識が不足している可能性が高いです。
また、本人は一生懸命努力しているつもりでも、努力の方向性や手順が間違っている(例:非効率な方法で時間をかけている)ことに気づいていません。
このタイプの対処法は、まず「ティーチング(教える)」が中心となります。
あいまいな指示を避け、具体的な手順を示したマニュアルを整備しましょう。
また、「企画書作成」といった大きなタスクではなく、「A社向けのデータ収集」「骨子作成」のように業務を細分化し、一つひとつクリアさせる方法が有効です。
怠慢・意欲不足タイプ(やる気が見られない)
特徴としては、業務中の私語が目立ったり、頻繁にスマートフォンをチェックしたりしている部下です。
ミスを指摘すると言い訳が多く、「〇〇さんが言わなかったから」などと他責にしがちで、チームの輪を乱すこともあります。
原因は、2つあります。
本人の仕事に対する考え方や姿勢(プロ意識の欠如)が根本にある場合と、現在の評価・給与に対して「頑張っても無駄だ」と不満を持っている可能性があります。
まずは、就業規則や服務規律といった会社の基本ルールを再確認させます。
その上で、「教える」のではなく「コーチング(考えさせる)」アプローチが中心です。
「なぜこのミスが起きたと思う?」「どうすれば防げる?」と問いかけ、本人に答えを出させることが重要です。
また、小さなタスクでも明確な目標と期限を設定し、達成・未達成をシビアに管理します。
一時的不調タイプ(急にできなくなった)
以前はエース級、あるいは少なくとも普通に業務をこなせていたのに、最近になって急にミスが増えたり、集中力が続かずボーッとしていたりします。
このタイプの原因は、スキルや意欲ではなく、外部要因が影響している可能性が高いです。
例えば、家族の介護や自身の健康問題といったプライベートな悩み、あるいは過度な残業続きによるバーンアウト(燃え尽き症候群)などが考えられます。
このタイプへの厳しい指導は禁物です。
まずは1on1ミーティングなどで、本人が話しやすい雰囲気を作り、「傾聴」に徹しましょう。
原因が業務過多であれば、すぐに業務量を調整します。
プライベートな問題であれば、会社の制度(時短勤務や休暇)を紹介したり、一時的に業務負荷の軽い部署へ配置転換したりするなど、本人の心身の健康を守る対応を検討します。
このように、タイプによって原因も対処法も異なります。
タイプと合わない指導をしても、逆効果になる事が多いです。
たとえば、悩みごとがあるのに、会社ルールを厳しく指導すると、やる気も無くなるのはおわかりいただけるはずです。
自分の成功体験を押し付けていないか
多くの上司が陥りがちな間違いが、自分の成功体験を部下にコピーさせようとすることです。
「自分はこうやってできるようになった」
「俺の若い頃はこうだった」
という指導は、一見すると熱心なように見えますが、多くの場合うまくいきません。
なぜなら、あなたと部下は、性格も、得意なことも、物事の理解の仕方も違う人間だからです。
あなたにとって最適な方法が、部下にとっても最適であるとは限りません。
重要なのは、部下を「あなた(上司)のコピー」にすることではなく、「部下本人が持つ能力を最大限引き出し、成果を出せる」ようにサポートすることです。
自分のやり方を押し付けるのではなく、部下に合ったやり方を一緒に探す姿勢が求められます。
上司が学ぶべき部下の育て方
部下の育て方を学ぶことは、管理職にとって必須のスキルアップです。
ここでは基本的な2つのアプローチを紹介します。
1. ティーチング(Teaching)
これは「教える」指導法です。
業務の手順や知識など、部下が知らないこと、できないことを具体的に教えます。
特に新入社員や、前述の能力・技能不足タイプの部下には、まずティーチングが必要です。
マニュアルを見せながら「やってみせ、言って聞かせて、させてみて」というプロセスが有効です。
2. コーチング(Coaching)
これは「引き出す」指導法です。
上司が答えを与えるのではなく、質問を投げかけることで、部下自身に考えさせ、気づきを促し、自発的な行動を引き出します。
ある程度の知識や経験がある部下や、意欲不足タイプの部下に対して、「どうすればできると思う?」と問いかけることで、主体性を育む効果が期待できます。
多くの管理職はティーチングに偏りがちですが、部下の状況に応じてティーチングとコーチングを使い分けることが、部下を自走させる鍵となります。
業務の細分化と小さな成功体験
「仕事が遅い」「期限に間に合わない」という部下に対しては、業務を徹底的に細分化するアプローチが極めて有効です。
例えば「企画書作成」という大きなタスクを任せると、部下は何から手をつけていいか分からずフリーズしてしまうことがあります。
これを、以下のように細分化します。
- 目的とターゲットの確認(本日15時まで)
- 関連する過去資料の収集(本日17時まで)
- 企画書の骨子(目次)作成(明日10時まで)
- 上記3を上司とレビュー(明日11時)
- データ収集と分析(・・・)
このようにタスクを細かく分解し、それぞれに短い期限を設定します。
そして、一つひとつクリアするたびに「できたね」と承認することで、部下に「小さな成功体験」を積ませることができます。
この積み重ねが、やがて本人の自信とモチベーションにつながり、「何をすべきか」を自分で考える力を養います。
指導とパワハラの明確な境界線
厳しく指導することを躊躇し、結果的に放置につながる背景には「パワハラと言われたくない」という上司側の恐れがあります。
しかし、業務上必要な指導とパワハラは全くの別物です。
指導とは、部下の「事」(行動や成果)に対して、客観的な事実に基づき、改善を促すことです。
パワハラとは、部下の「人」(人格や尊厳)を否定することです。
重要なのは、「人」と「事」を徹底的に切り分けることです。
部下の人格を尊重しつつ、業務上の問題行動については客観的かつ具体的に、粘り強くフィードバックし続けることが、パワハラを恐れずにできる正しい指導です。
見切り期間の前に試すべきこと
あらゆる指導を試みても改善が見られない場合、「見切り」を考える前に、必ず実行すべきことがあります。
それは「指導記録」を残すことです。
いつ、どのような問題行動があり、それに対して上司がどう指導し、部下がどう反応したか。
これを客観的な事実として記録(メール、日報、面談議事録など)に残します。
記録を残す目的は、部下を追い詰めるためではありません。
万が一、配置転換や最終的な処遇(退職勧奨など)を検討する際に、「会社(上司)として、これだけ育成努力を尽くした」という客観的な証拠を守るためです。
また、記録を見返すことで、上司自身の指導方法の偏り(感情的になっていないか等)を振り返る材料にもなります。
限界なら上司への報告も重要
部下の育成は上司の責任ですが、一人ですべてを抱え込む必要はありません。
あらゆる手を尽くしても改善が困難だと感じた場合、または上司自身のストレスが限界に達しそうな場合は、速やかにあなたの上司(部長など)に報告・相談してください。
「自分の指導力不足で申し訳ない」と抱え込むのは、最も危険な状態です。
部下の処遇(配置転換や、場合によっては専門部署による対応)は、課長一人で判断すべき問題ではなく、組織として判断すべき問題です。
問題を「放置」するのではなく、「現状を正確に報告し、組織としての判断を仰ぐ」こと。
これも管理職の重要な責任の一つです。
部下指導で疲れた上司のストレスケア
最後に、部下の指導に疲弊している上司自身のケアも忘れてはなりません。
あなたが倒れてしまっては、チーム全体が機能不全に陥ります。
部下の問題と自分の問題を切り離し(課題の分離)、過度に感情移入しすぎないことが大切です。
また、同僚の管理職と悩みを共有したり、社内の相談窓口を利用したりすることも有効です。
仕事から離れる時間を意識的に作り、リフレッシュすることも忘れないでください。
あなたが健全な心身を保つことが、巡り巡ってチームを守ることにつながります。
まとめ:仕事ができない部下の放置はNG
仕事ができない部下を放置することは、上司の責任放棄であり、チーム崩壊のリスクをはらみます。
この記事の要点をまとめます。
- 仕事ができない部下を放置してはいけない
- 放置はチームの士気低下や生産性悪化を招く
- 上司のストレス源になるが、向き合うことが責務
- フォローに疲れるのは当然だが、仕組みで解決する
- 優しくできないのは、上司が責任を感じている証拠でもある
- 「やめてほしい」と願う前に、上司の責任を果たす
- まずは部下ができない原因をタイプ別に分析する
- 能力不足か、意欲不足か、一時的なものかを見極める
- 自分の成功体験(コピー)を押し付けない
- 上司は「教えるプロ」ではないことを自覚し、育て方を学ぶ
- ティーチング(教える)とコーチング(引き出す)を使い分ける
- 業務を細分化し、小さな成功体験を積ませる
- 指導とパワハラは別物。「人」と「事」を切り分ける
- 見切りを考える前に、必ず指導記録を残す
- 一人で抱え込まず、限界なら上司に報告・相談する
- 上司自身もストレスケアを怠らない
